【プレスリリース】量子科学技術研究開発機構によるLiSTie株式会社への出資に関するお知らせ
- 夏目
- 7 日前
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更新日:3 日前
~認定ベンチャーへのさらなる支援で、フュージョンテクノロジーの社会実装を加速~
量子科学技術研究開発機構(QST)によるLiSTie株式会社への出資について、QSTと共同プレスリリースいたしました。LiSTie株式会社は、QSTのフュージョンエネルギー開発で生まれた革新的技術により創出されたリチウム回収技術の産業化を加速させてまいります。
以下、2025年5月9日付けで発表されたプレスリリースの内容を掲載します。
(本文)
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:小安 重夫、以下「QST」)は、研究開発成果の最大活用を図り、その普及・実用化により社会へ還元することを目的として、QSTが認定したベンチャー企業に対する支援を進めています。QSTは今般、認定ベンチャーの成長を促進する更なる支援策として、また、フュージョンエネルギーの実現に必須なリチウム回収技術の開発と産業化を加速させるために、令和7年3月24日に認定ベンチャーであるLiSTie株式会社(CEO:星野 毅、以下「LiSTie」)への出資を行いました。認定ベンチャーへの出資は、QSTが平成28年に設立されて以降初めての実施となります。
今回の出資は、リチウム回収技術に関するQST知財をLiSTieへ実施許諾する対価として、LiSTieから普通株式を取得するというスキームです(図1)。LiSTieが今後開発するリチウム回収技術がフュージョンエネルギー開発に必要となる海水からのリチウム回収技術を進展させることが期待されます。

【両者代表のコメント】
LiSTie 株式会社 代表取締役 星野毅
「QST のフュージョンエネルギー開発で生まれた革新的技術により、電池に不可欠なリチウムの安定供給という社会課題の解決に貢献します。更に、社会実装を通じて創出される当社技術がフュージョンエネルギーの燃料生成にも活用され、リチウム資源循環を促し持続可能な社会の実現を目指します。」
量子科学技術研究開発機構 理事長 小安重夫
「LiSTie との連携により、QST の研究成果であるLiSMIC 技術の実用化が大きく前進することを嬉しく思います。この度の出資を通じて両者の協力関係を強化し、基礎研究と産業応用の架け橋となる取り組みを加速させることで、資源循環型社会の構築に向けた貢献ができることを期待しています。」

【補足説明】
QST はフュージョンエネルギーの実現に向けた研究開発を推進しており、その一環として燃料生成に必要なリチウムを海水中から回収するためのイオン伝導体リチウム分離法(Li Separation Method by Ionic Conductor;LiSMIC)を開発してきました。令和5 年4 月には統合イノベーション戦略推進会議にて策定されました「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」において、“フュージョンエネルギーの産業化”が掲げられる中、QST では近年需要が急増するリチウム市場を睨みLiSMIC 技術の早期社会実装に取り組んで参りました。
LiSTie はLiSMIC 技術の早期社会実装を目指して、令和5 年7 月に創立されたQST 認定ベンチャーです。世界初のセラミックス膜を使用した超高純度リチウム回収装置であるLiSMIC ユニット3)の販売を中心としたビジネスモデルを構想しています。LiSMIC ユニットは、工業廃水、リチウムイオン電池リサイクル、塩湖、鉱石、海水等の様々なリチウム源から純度99.99%の超高純度リチウムをワンパス(膜1枚を通すのみ)で回収できることが大きな特徴で、リチウムを安価に安定して供給することを可能とするものです。日本だけでなく、世界的な事業展開を通じてリチウムの効率的な回収と安定供給を通じて、サステナブルな未来の実現を目指します(図2)。

LiSTie が開発しているLi 回収技術は核融合の燃料生成のために非常に有用で、QST の核融合研究開発において重要であり、QST はLiSMIC ユニットの実用化に期待しております。LiSMIC ユニットは海上コンテナの40 フィートサイズ位の大きさ、設置場所としては塩湖のある南米諸国でリチウム生産拠点としている港町の工場内、電池のリサイクル工場内、核融合炉の敷地内もしくは敷地の隣に工場を作ることを想定しています。
今般、QST は認定ベンチャーであるLiSTie にQST として出資を行い、LiSTie の一部株式を取得いたしました。この出資により、QST はLiSTie の成長の更なる支援を行っていきます。
LiSTie は、LiSMIC ユニットを実現するための独自の研究開発を進め、QST のフュージョンエネルギー研究から生み出されたリチウム回収技術を社会に役立てる事業を推進するとともに、将来的には海水からのリチウム回収技術を完成させ、フュージョンエネルギー開発にも貢献していきます。
今後、QST、LiSTie の双方で協力し効率的な研究開発を行う事で、フュージョンエネルギーの実現に必要なリチウム回収技術の完成と、そこから生み出された技術の社会実装を促進していきます。
用語解説
1)LiSTie(リスティー)株式会社について
LiSMIC の発明者である当社代表の星野が2023 年7 月に設立したスタートアップです。電気自動車やスマートフォン、再生可能エネルギーの蓄電など、現代の豊かな暮らしを支える重要なインフラ資源であるリチウムは、2040 年に受給バランスが崩れると見込まれています。このリチウムの安定供給と資源循環の実現を目指し、世界初の商用リチウム回収装置であるLiSMIC ユニットを社会実装し、地球温暖化問題の解決に貢献してまいります。
将来的にはフュージョンエネルギーに当社の国産リチウムを供給し、未来の世代までもが安心して暮らし続けられる社会の実現を目指してまいります。
2)LiSMIC(リスミック)(図3)

イオン伝導体リチウム分離法(Li Separation Method by Ionic Conductor)を表します。リチウムを含む原液とリチウムを含まない回収溶液間をイオン伝導体の分離膜で隔離し、原液と回収溶液間に電圧を印加することで、原液に含まれるリチウムを回収溶液へ選択的に移動させて濃縮回収するQST 独自の方法です。海水のほかに、使用済みリチウムイオン電池の処理溶液、塩湖かん水、にがりなどの様々なリチウム含有溶液から超高純度リチウムを回収する革新的な方法として期待されています。
3)LiSMIC ユニット(図4)

LiSTie が開発中のコンテナ型の社会実装リチウム回収装置。LiSMIC を利用し、リチウムを含む溶液から超高純度リチウムを回収する世界初の装置です。